立坑(たてこう)とは、地面に対して垂直に、地面からまっすぐ地下へ掘られた穴のことです。
炭鉱ではかつて「斜坑」という名前の通り斜めの坑道が掘られていましたが、地下へ地下へ堀り進めると斜坑では効率が悪いです。何度も坂道を折り返して地下深くまでいかなければならないためです。体力的な話だけでなく、貴重な労働時間のほとんどが移動、なんて効率悪すぎですよね。階段でも3階から1階くらいなら行けますが、7階なんかになるとエレベーターを使いたいと思うはずです。そのエレベーターが、炭鉱で言う『立坑』なのです。
上記のように、人が移動するのを効率化させるための立坑が「運搬立坑」です。人だけでなく、石炭や採炭のための道具なども運びます。
そのための大きいエレベーター設備が整備されています。よく写真を見るものはだいだい運搬用の立坑です。
また、石炭を掘っているとメタンガスが出てきます。石炭ができる段階で生成されるもので、CBM(たしかCoal Bed Methane)などと呼ばれます。
このメタンガス、無臭のため人間は吸っても気が付きません。ガスがたまっていると、気が付かないうちに窒息、なんてことになってしまいます。また可燃性なので、静電気などのちょっとした火花で引火し、爆発・火災が起きる可能性があります。そのため、坑内の空気の入れ替えが必要です。
入気(=空気を取り入れること)は、坑道を掘っておけば勝手に空気が入っていくため、設備をわざわざ整える必要はありません。しかし排気(=坑内の汚れた空気を排出すること)はそうはいきません。
そこで活躍するのが排気立坑です。立坑を掘り、坑内の空気を吸い出すためのでっかい扇風機を設置します。この設備が排気立坑です。
こうして入気と排気をうまくやることが坑内の安全につながります。
このサイトでは主に運搬立坑を扱います。エレベーターのほうです。
エレベーターと言っても、それぞれの立坑で仕組みは様々です。まずはドラム式とケーペ式という分類について説明します。
まずは「ドラム巻き」と呼ばれるシステムについてです。
図のように、人や石炭を乗せるかごのついたロープを、動力滑車である「ドラム」で巻き取ったり送り出したりして地下と地上を行き来させます。釣り竿のリールみたいな感じです。
無動力(自分からは動かない)滑車はヘッドシーブと呼ばれます。
どんな深度でも利用できるのがドラム式の特徴です。
次にケーペ式についてです。
井戸の釣瓶式みたいな感じです。ロープを巻き取るのではく、ケーペプーリーと呼ばれる動力滑車を動かすことで、片方のかごが上がれば片方が下がり、片方が下がればもう片方は上がるという仕組みになっています。
戦後の立坑にはケーペ式がよく用いられました。しかしケーペ式は浅い深度に向かないため、深度の浅い立坑では工夫をして利用されていました。
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